Hondaの将来を、
すべてのモノづくりを、
ナビゲートできる自分で
ありつづけたい。

1999年入社

"経理"

髙橋 純洋/SUMIHIRO TAKAHASHI

本田技研工業(株) 事業管理本部 経理部
経済学部 経済学科 卒業

経理とは、
“経営のナビゲーター”
である。

大学で経済学を学びながら、僕の心はすでに決まっていた。「卒業したら“経理”をやりたい」ちょっとマニアックな話になるけれど、“複式簿記”という帳簿のつけ方は、ホントによくできているなぁと感心する。資産がどれだけ増え、そのために、資金がどれだけ減ったのか。1円単位でピタリと一致し、すべてのお金の動きが一目瞭然になるからだ。モノづくりの世界でいえば、部品を仕入れるときに、製品を生産するときに、工場を建てるときに・・・費用が発生した何万、何十万という取引が明らかになる。そして、財務諸表となり出そろった数字は「収益をもっと増やす手があります」「将来のためにそろそろ準備をしておきましょう」と、経営陣への“提言”の素になる。つまり、経理とは“経営のナビゲーター”。そこに僕は惹かれた。

ゼミのテーマは、自動車会社をテーマにした工業経済論。それも影響して、「“Honda”で経理をやりたい」と思った。連戦連勝していたF1での強さが好き。創業社長の哲学が好き。なにがなんでもやる感じが好き。いろんな意味でHondaファンだった。経理をやる上でも、最高のステージだと思った。世界中に展開する開発拠点や生産拠点の多さ。膨大な製品のラインナップ。ロボットもつくれば、レースもやっている。プロジェクトがあるところに、業務あり。事実、“お金が動くところには、どこにでも顔を出す”。Hondaに入社して実感したことだ。経理には“オフィスで一人黙々と計算機を叩いている”イメージが付きまとうが、実際はまるで違う。“すべてのモノづくり”に関わるチャンスがある仕事なのだ。

入社間もない頃、僕は経理のイロハをモノづくりの“現場”で学んだ。Honda埼玉製作所。部品の取り付けから完成車の検査まで一貫生産する、1967年に操業をはじめた四輪専用プラントだった。管理するものは、予算や収益はもちろん、固定資産にまでおよんだ。件数にして数万件以上。会計監査を受ける対象になるため、購入時や廃却時の処理には厳しいガイドラインや期限が決められていた。どうするか“自分で考える”スタンスを身につけるには十分すぎる状況だった。「がんばります」では済まされないし、「やるしかない」。乗り越えられたのは、仕事ぶりを見習える“経理のプロ”に囲まれていたことが大きい。尊敬できる先輩たちのおかげで、僕は経理という仕事の面白さも学ぶことができた。

経験や勘や度胸だけでは、
この世界では通用しない。

「一度は“海外”で経理をやってみたい」僕は入社したときから希望を出しつづけていた。念願がかなったのは、10年目。各メーカーの工場進出で自動車製造のメッカとなった米国アラバマへ。Hondaが現地で建設を進めていた四輪専用プラントで働くことになった。工場の稼働効率を上げ、収益を確保するために、有益な会計報告をいかに行えるか。メンバーとなった僕に求められたことだ。最大の壁は、慣れない“コミュニケーション”だった。「ここは丸く収めましょう」「言うまでもなくわかるでしょ?」といった日本式の処世術は通用しない。「キミはどう思う?」と常に問われるのだ。僕は考えるだけではなく、”主張する”習慣を自分に刻み込んでいった。そして帰国する頃には、アメリカ人の上司と意見で度々ぶつかるほどになっていた。

本社の経理部に異動したあと、僕には大仕事が待っていた。“連結決算”だ。配属先は、今も籍をおいている連結会計ブロック。子会社や関連会社の財務諸表を合算し、グループ全社を一つの企業として連結財務諸表を作成。年に四度ある決算発表に向けて準備を進める部署だ。様々な数字から、全世界のHondaの動きを見渡し、全社的なダイナミズムを感じることができるのは、経理冥利に尽きること。一方で、公になる連結財務諸表は、あらゆるステークホルダーの目に留まる。ときに株価や資金調達などにも多大な影響を与える。経理といっても、いろんな業務があるし、どんな取引を担当するにしても責任は付きものだ。ただ、連結決算の“重圧”のかかり具合は、埼玉でもアラバマでも経験したことのないものだった。

製品の“品質”にあたるのが、連結決算では“数字の精度”だ。というのも、財務諸表を合算していく子会社や関連会社の数は、北米を中心に欧州、南米、中国など全世界に約450社。埼玉製作所もアラバマ工場もその一つだ。そして、連結財務諸表の作成ルール“会計基準”は国ごとに違う。連結決算で採用しているのは、米国会計基準。いわば翻訳してもらった上で、財務情報を提出してもらう必要がある。ただ、集めたあとも、単純に足し込んでいくわけではない。連結決算では、グループ間の取引を除くなど、様々な会計処理が必要だからだ。いかにして“正しい数字”を対外発表するか。そのためには、個社ごとに確認をとり、数字を精査し、問題があれば潰していくしかない。自分たちが間違えれば、Hondaの発表が食い違うことになる。経験や勘や度胸に頼るだけでは、通用しない世界なのだ。

すべては、
Hondaの企業価値を
最大化していくために。

“納期”も、品質に並んで問われる重要項目だ。年度決算が締まるのは3月。そして、対外発表はゴールデンウィーク前に行われる。その間に、世界中のHondaから集めた財務情報をまとめ、公認会計士を交えて財務諸表を作成。発表前までに監査法人との調整を行うというような外部との連携も必要になる。発表する日時は事前に告知するので、もし遅れれば会社の信用を損なう。期日を守るため、いかに日程どおり事を進められるか。子会社や関連会社で手続きが遅れたり、不備がある場合もある。自分たちが最終工程。「間に合いません」はありえない。二階に上げられて、ハシゴを外されるようなもの。ただ、追い込まれたときほどテンションは上がるものだ。「俺がやらねば誰がやる」と。お金の部分をすべてHondaから任されているという責任が、自分を突き動かしてくれる。

経理がタッチするのは、“現在”だけではない。世に送り出すモビリティの“未来”にも携わる。四輪や二輪やパワープロダクツ、ASIMOにもHondaJetにもF1にも、プロジェクトメンバーの一員として参加する。その立ち上げから、“お金のプロフェッショナル”として。アイデアは無限だが、資金は有限だ。開発部門は「挑戦したい技術がたくさんある」といい、生産部門が「やるなら設備が必要だ」といえば、営業部門からは「プライスを上げたくない」と声があがる。販売目標や価格から投入可能なコストを割り出し、何年で投資を回収できるか答えを出す。全部門に対して働きかけ、収益がちゃんと出るモノづくりにするのが役目だ。Hondaを選ばなければ関われなかった仕事。ファンの一人としてワクワクできる時間でもある。

どんな情報を伝えると、経営の役に立つのか。マネジメントに有用なのか。経理部門のミッションは、Hondaの企業価値を最大化していくことにある。求められているのは、報告ではなく、提言。「こうです」ではダメで、「こうするべきです」が重要なのだ。集計された数字を“どう読み解くか”は、腕の見せ所。100億の中の1億と、10億の中の1億では、1億の意味合いが違ってくる。置かれた状況によっては、正常値になり、異常値にもなる。数字がもつ“意味”を、わかりやすく解説すること。そこに僕はこだわっている。“経営のナビゲーター”でありつづけるために。Hondaは、「やりたい」といったことに対して、「やってみろ」といってくれる会社だ。お金という軸から眺めた将来についても、聞く耳をもってくれているのは間違いない。