環境に優しい次世代のエネルギー源として、いま注目を集める「燃料電池」。この燃料電池をHonda車に搭載するための研究開発に携わっています。なかでも私が取り組んでいるのは、低温環境下で燃料電池を起動させるための技術の確立。燃料電池は水素と酸素を反応させて電気エネルギーを生みますが、その際に生成される水が氷点下だと電池内で凍結し、起動できないという現象が起こってしまいます。この問題を解決するために知恵を絞っています。
燃料電池そのものが新しい技術であるため、まだまだ解明されていないことはたくさんあります。私が手がけている、氷点下での生成水の電池内での凍結もそう。どうしてこのような挙動が起こるのかを明らかにして対処しなければ、寒冷地で燃料電池を走行させることはできません。自分で仮説を立てては実験を繰り返し、たとえ失敗してもその原因を考えるのは楽しいですし、想定通りの結果が出た時は大いにテンションが上がります。
低温環境下で燃料電池を起動させる新しい方式を検討することになり、私がリーダーとしてテストを進めていきました。以前の方式と比較してどのようなメリット・デメリットがあり、どんなメカニズムで生じているのかを解明するため、電池内の環境計測などの手法を一から考えて実施しました。非常に苦労したものの、性能を最大化するための最適な条件を導き出すことができ、これを成し遂げたことは大きな自信に繋がりました。
まずは、私の研究成果を反映したHondaの燃料電池自動車を世の中に送り出すことが大きな目標です。
低温環境における燃料電池の挙動を究め、氷点下が当たり前の国や地域でも問題なく走れるクルマを実現したい。
そして、この分野のスペシャリストになってさらに技術を深め、
将来的には宇宙や深海でもエネルギー源として機能する燃料電池を創り出し、
この電池の可能性を広げて未来の社会の発展にも貢献できればと思っています。
若いうちからいろいろなチャレンジをさせてもらえる風土です。自分がやりたいことを訴えて、それが理にかなったものであれば上司は認めてくれますし、周囲の先輩方も助言し、サポートしてくれる。自分の意思で研究開発を進めたいという人には絶好の環境だと思います。
私は「ものづくり」が好きで、最近は休日も自宅で裁縫や粘土細工に熱中していることが多いですね。新型コロナウィルスが流行する前は、ライブや旅行によく出かけていました。コロナ禍が収束すれば、愛車のN-ONEに乗ってまたあちこち出かけたいですね。
いま私が所属している研究所には、個性的な方がたくさんいらっしゃいます。
こんなタイプの人が多いとか、ひとくくりで表すことができません。
それでもひとつ共通しているのは、みな「研究を心底楽しんでいる」ということ。
それぞれ独自の視点や発想を持っていらっしゃるので、研究所内でディスカッションするのは楽しいですね。
大学では体育会のハンドボール部に所属していました。接触プレーの多い激しい競技ですが、試合の展開がスピーディーなところが私の性に合っていて、高校時代からずっと打ち込んでいました。ポジションごとにいろんな個性や能力を持つ人とチームを組んで勝利を目指すのは、いまの研究開発の仕事に通じるところがあります。
専攻していた化学の知識を活かし、生活に身近な製品に関わりたいと考えていました。燃料電池など化学系の研究開発ができる自動車メーカーにも興味を持ってHondaを訪れたところ、社員のみなさんが自分の夢を持って研究開発にチャレンジしている様子にとても惹かれ、私もぜひここに加わりたいと入社を決めました。
「こんな人がHondaに向いている」というのはまったくないと思います。
Hondaの事業に関わることで、何か自分が挑戦してみたいことをお持ちなら、
それをアピールすればきっとチャンスを手にできる。
熱い想いにあふれた人とぜひ一緒に働きたいと思っています。
※取材内容、および登場する社員の所属は取材当時のものです。